| 精巣内から組織を採取し、精子を探す方法をTESE(Testicular
sperm
extraction)といいます。精液中に精子が確認できない無精子症例においてもTESEによって得られた精子で顕微授精(ICSI)を実施すること
により挙児が可能となっています。
精巣内には精細管と呼ばれる細い管が約1300本程度集まっており、この精細管の中で精子が作られています。作られた精子は精細管腔内を移動し、精巣上体
に集められ、精管を通って尿道へと排出されます。
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TESEは、麻酔下にて精巣を切開し組織(精細管)を採取します。
現在当院では、顕微鏡下で精巣組織を観察し、よりよい状態の精細管を選別して採取する方法(Micro-TESE: micro-dissection TESE)を主に行っています。
採取した精細管は非常に細かく切り刻み、精細管の中から出てきた精子を顕微鏡下で探し出します。無精子症には、閉塞性と非閉塞性とがあります。
閉塞性は精巣で精子が作られていても精路の詰まりなどで体外に排出されない症状であり、
手術で詰まりを解消すれば完治します。
一方、非閉塞性は根本的な治療法はありませんが、精子が造られる大元である精巣を切開し、
手術用顕微鏡を用いて精子を探し、採取できればその精子を妻から採取した卵子に顕微授精する方法があります。
この顕微鏡下の精巣精子採取術は90年代終わりに米国で始まりました。現在、日本でこの手術ができる専門医は、
ほんの20人程度です。
当科では本術式を非常に得手としており、日本はもとよりアジア各国はじめ世界中の医師や患者から問い合わせがあります。
非閉塞性無精子症でも、この手術をすれば45%程度は精子採取が可能です。今後も関西地区にこだわらず、日本、世界レベルでもトップレベルの手術成績を収め患者の方々には手術や治療のつらさを最小におさえられるよう努力したいと考えています。
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Micro-TESE: 矢印が拡張した精子を含む精細管
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| ◆ TESE-ICSIについて |
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TESEで得られた精子を用いた顕微授精(TESE-ICSI)は、1993年に閉塞性無精子症例において初めて妊娠例が報告されました。
その後、非閉塞性無精子症での妊娠例が報告され、現在TESE-ICSIは重症男性不妊に対する治療法として普及しています。
当院では婦人科不妊クリニックと連携し、回収した精子を顕微受精できる体制を十分に整えています。
さて、micro TESEにてなんとか精子を回収できたとしても、やはりそれだけ質の良くない精子が多いことはよくわかっています。
これを凍結、融解するとさらにいい質の精子は減少または無くなったりする可能性があるわけです。
アメリカやオーストラリア、ヨーロッパでは非閉塞性無精子症の場合、凍結精子を用いることは稀です。
必ず、奥さまから採卵する同時にmicro TESEを行います。成績はやはり新鮮のものがいいことは証明されています。
しかし日本には日本の問題点があります。それはdonor sperm(精子バンク)の問題です。
日本では精子バンクというものは存在せず、AID(非配偶者間の人工授精)のための認定施設があるだけです。
顔写真、学歴、人種、性格などを選ぶことはできません。
アメリカではmicro TESEで採取できないときにはこのdonor spermを使用することも多いのです。
日本においてこのシステムがないということは、奥さまの採卵が全く無駄に終わる可能性があるということを意味します。
可能性というか、50%以上は無駄になってしまうのです。
Micro TESEというのは非閉塞性無精子症の根本的な治療ではなく、単に宝探しをしているようなものなのです。
宝があるかどうかわからないのに、高額のお金をかけて、しんどい思いをしてその受け皿を作っているようなかたちになります。
精子回収率が70%程度あれば、それこそ、奥様にも新鮮精子と凍結精子を用いた顕微授精の成績をお見せし、
納得していただいたうえで、micro TESEと同時の採卵をお薦めしたいところですが、現時点で精子回収率は45%程度ですので、
どうしてもそこまでお薦めすることはできません。
よって日本ではまずmicro TESE、精子が存在すれば精子を凍結。
次に奥さまの排卵誘発、採卵、という流れで進んでいくのが通常です。
もうひとつ問題点があるとすれば、それは婦人科主体の不妊クリニックが男性不妊専門医とどう連携をとるかということです。
奥さまの採卵の日程は微妙に調整することはできますが、大きく動かすことは困難です。
男性不妊専門の常勤医がいれば、全く問題はないのですが、そのような施設はほとんどありません。
あっても大学病院という大きな施設となり、こういった病院は休日にも診療をするなどといった小回りが利かず、
逆に不妊治療臨床には不向きです。
奥さまの排卵刺激を行い、採卵の日程が決定した時点で、micro TESEができる男性不妊専門医がすぐ手に入るといった
状況はなかなか難しいものがあります。こういった社会的な理由からも、新鮮精巣精子を用いた顕微授精が行われずに、
精巣精子が凍結され、時期をおいて奥さまの採卵、顕微授精が行われるのです。
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| ◆ 精索静脈瘤について |
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精巣の静脈に血液が逆流しているために、細い静脈が拡張して「こぶ」のようになっているものです。
陰嚢上部での蔓(つる)状静脈叢が怒張、うっ血している状態を指します。
思春期より後の男性によく発生する病気で、この精索静脈瘤は、不妊治療で受診する男性では25〜40%に認められますが、
一般男性においても約10〜15%に存在するものです。自覚症状を訴える方は比較的少ないですが、中には陰嚢部の違和感や鈍痛、
陰嚢の腫大、腫瘤触知を訴える方もおられます。
実際に、男性不妊症の患者さまにおいての頻度が高いことから、静脈瘤を治療すれば精液所見を改善し、
子供ができやすいと考えられ、不妊症で精索静脈瘤のある患者さんには精索静脈瘤の手術が古くから広く行われてきました。
ところが、これまでに精索静脈瘤手術の有効性について検討した研究成果を集計した論文が2003年に発表され、
その中で「精索静脈瘤の治療は男性不妊症の治療として有効とはいえない」と結論づけられました。
もしこの論文の結論が正しければ、これまで広く行われてきた精索静脈瘤の手術が無意味なものとなります。
しかし、この調査の中にはグレードの低い、いわゆる程度の軽い精索静脈瘤に対する手術も多く入っているために
このような結論になった可能性があります。
手術後、経過を追っていくと、ずいぶんと精液検査のデータが良くなっていくことを多く経験していますので、
グレードの高いものに対しては積極的に治療を勧めているのが現状です。
解剖学的にみて、精索静脈瘤はほとんどが左側にだけ発生します。
なぜなら左内精静脈は左腎静脈に還り、右内精静脈は下大静脈に還ります。
この違いが、左側にのみ血液の逆流が起こり、精索静脈瘤が発生しやすい理由なのです。
精索静脈瘤のある男性に精子形成不全が起こるメカニズムは完全には解明されていませんが、
腎、副腎の代謝物の精巣への逆流、血流の鬱滞による精巣内の低酸素状態や陰嚢内の温度上昇、
また下垂体−精巣系に関する内分泌(ホルモン)異常などを原因とする説があります。
実際に、精索静脈瘤によく見られる精巣温度の上昇は、精子形成におけるDNA合成能力や減数分裂能を低下させることがわかっています。
精索静脈瘤の診断は、立ち上がった状態で腹圧をかけていただき、陰嚢を触診し、精巣の静脈が太く怒張しているかどうかを診ます。
診断を確定するためには陰嚢の超音波検査(エコー検査)を行い、静脈への血液の逆流または静脈の拡張を確認します。
静脈瘤はその程度によって、触診でグレード1から3に分類されます。また、触診ではわからないものの超音波検査で診断できる静脈瘤を、
サブクリニカル静脈瘤といいます。
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